Novel Therapy『 タリーと木の棒 』

『 タリーと木の棒 』
和 著


あるところにタリーという1人の少年がいました。
タリーはいつも白い靴に青いツナギをきて、お母さんがくれたペンぐらいの長さの“タリー”と書かれた木の棒をいつも握っている内気な子です。

お父さん、お母さん、妹と4人家族で楽しく生活していて、
タリーが住む街の名前は「タリー町」といって同じ名前です。
タリーは自分と同じ名前のこの街をすごく大切におもっています。

タリー町はどちらかというと貧しい街ですが、優しい街です。


路地で毎日のようにかくれんぼをして遊ぶ友達もいてタリーは幸せです。


だけど、タリーは心のどこかで自分の生活に物足りなさを感じていました。


それは、昔かくれんぼの時にたまたま出会った旅のおじさんの話を忘れられないからでした。
おじさんの話では外にはいろんな世界がありいろんな人たちで溢れているというのです。
だけど、おじさんは旅ですごく疲れていたから偶然通ったこの優しい雰囲気の街で少し休んでいるんだと話してくれました。


おじさんはタリーと同じ歳ぐらいの男の子を連れて旅をしていました。
タリーがその男の子に「いろんな世界を見れて羨ましいなあ。」とはなしかけると、

その男の子は、「優しい雰囲気の街で友達や家族に恵まれている君の方が羨ましいよ。」と言いました。
元気がない様子の男の子にタリーは「僕が大事にしている木の棒をあげるから元気を出して。」と木の棒を男の子に渡しました。
タリーは自分が大事にしている木の棒をあげることで男の子が元気になると思ったのです。


男の子は「そんな大事なものもらえないよ!」と断りましたが、

タリーは「じゃあ、旅の先で落ち込んでいる子がいたら君がその子にその木の棒をあげて。そうやってこの木の棒は人を元気づけながらいろんなところを旅するんだ!」と笑顔で答えました。
タリーの優しさに触れた男の子も笑顔になり「ありがとう。」と木の棒を受け取りました。


タリーが言った通り、その木の棒は人から人へと受け継がれながら多くの人を幸せにしました。
木の棒と共にタリーから男の子へ、男の子から次の子へと受け渡されてきた出来事が物語として受け継がれるようになりました。


そうしていく中で、その木の棒はある国の偉い人にまで行き着き、その人を元気にしました。


そして、その偉い人は自分を元気付けてくれたこの木の棒の最初の持ち主に感謝を伝えたいと思い、元の持ち主を探し始めました。


木の棒と一緒に受け継がれた物語の中で、最初の少年がこの木の棒をもらったのが“タリー町”だと語られていたので、偉い人はタリー町に探しにいくことにしました。


偉い人はタリー町に到着すると町長のところに行き、わけを話しました。

優しい町長は木の棒の持ち主探しに協力しました。


すると探し始めてすぐに、持ち主だという少年が現れました。
しかし、その少年はタリーではなく自分の手柄にしたいという偽物でした。


タリーの耳にも木の棒の持ち主探しの話は届いていましたが、内気なタリーは偽物が先に出現したことにより、自分が持ち主だということを言い出せずに落ち込んでしまっていました。


しかし、元気がないタリーに友達と妹が気づき話を聞いてくれました。


話を聞いた友達は、タリーの代わりに「その木の棒の本当の持ち主はタリーだ!」と声をあげてくれたのです。


しかし、偽物は「証拠がないだろ?」と言います。


友達は確かに証拠はないとたじろいでしまいました。

妹が「証拠ならある!」と言いました。
妹は「その棒はお兄ちゃんが寝るときも遊ぶときもずっと手に持っていた大事なものだから、お兄ちゃんの手の跡がついてるの!」と木の棒を指さしました。


持ち主を探していた偉い人は、タリーに「この木の棒を持ってみて」とタリーに渡し、タリーが握った姿を見て、「大事な木の棒なのにどうして手放したんだい?」と尋ねました。
タリーは、旅のおじさんと男の子の話をしました。


その話は、木の棒と共に語り継がれてきた物語と同じ話でした。

偉い人はタリーが本物の持ち主だと確信し、タリーに「ありがとう。私はこの木の棒に元気をもらい救われたんだ」と感謝を伝えました。


タリーは自分でも人を元気づけることができたということを知りました。

もっと多くの人たちを、自分とこの町で元気付けていきたいと強く思い、
いろんな人の力をかりてこの一連の出来事をお芝居にして年に一度大きな舞台を開きました。


そうしてたくさんの人たちを元気付け笑顔にすることができました。

ある時、タリーは気がつきました。
タリーが抱えていた、あの“物足りなさ”は姿を消していたということを。



めでたし、めでたし。


mikke!

みつける・とらえる・つながる  誰も特別じゃない。誰もが特別な存在。 誰もが表現者であり、誰もが自由に自分を創造できる。 空の下 誰もが みな輝く主人公。 みなが主人公として「好き」をする自分に還り、心地よく、自分の意志で自由に楽しく生きられる優しさだけの世界に。 We are in the Circus World! ノベルセラピー、表現アートセラピー、 ソウルナビゲーション、イメージワーク