Novel Therapy『 こころ 』
『こころ』
Shake 著
友達に囲まれ、笑顔で過ごす一人の少年。
彼は友達を笑わせるのが大好きで、人の笑顔を見ることが何より好きだった。
名前はエドワード。
人前でふざけたり、調子の良いことを言ったりして、友達を笑わせるのが好き。
髪は綺麗な金髪。シミ一つない綺麗な白シャツを着て、靴はお気に入りの茶色のブーツ。
おじいちゃんからもらった茶色の革製のベルトは、濃紺のジーンズに良く合う。
これは、そんな彼の物語。
ある日、エドワードが目を覚ますと、青空が広がっていた。
知らない間に寝てしまっていたことに気付いたエドワードは、ゆっくりと起き上がる。
すると、そこには見渡す限りの大草原が広がっていた。
「ここはどこだろう。」
遠くの方に風車が見える。
風車の横に家が見えるけど、人影は見えない。
風が心地よく吹いていて、陽の光が暖かい。
「どこか知らない場所だけど、なんか気持ちいい。」
エドワードは、見知らぬその場所を『青空の街』と名付けた。
誰もいない、自分一人の世界。
「さ、これから何して遊ぼうかな」
そう思って立ち上がった時、エドワードは不思議な気持ちになった。
「遊ぶって…。遊ぶって何するんだっけ?」
そんな言葉が頭に浮かんだ瞬間、なんとも言い表せない感覚を覚えた。
雲一つない青空、遮るものも何もない大草原。
解放感に溢れた空間にいるにも関わらず、
どこか…空っぽな気がした。何かが足りない気がした。
ふと、胸に手を当ててみる。
「あれ。『心』が空っぽだ。」
エドワードは急に不安になった。
そわそわして、居ても立っても居られない。
「『心』を探さなきゃ。」
そう思って一歩を踏み出そうとしたけど、足が動かない。
どう頑張ってもうんともすんとも言わない。
自分の足なのに、言うことを聞いてくれない。
自分の足を見下ろして、手で太ももあたりを叩いてカツを入れようとする。
「あれ、なんで?」
手も動かない。
エドワードは真正面を見ながら立ち尽くした。
手も足も動かない。
ふと、空を見上げてみた。
その時、あることに気付いた。
「あ、わかった。“探そう”とするからいけないんだ。」
そう思った途端、身体が軽くなった気がした。
視線を正面に移した。
そこには、顔がぼやけて見えないけど、
『大人』が一人、立っていた。
とても驚いた。けど、何か自分に向かって言っている。
「探しなさい、見つけなさい。どこかにあるはずだから…」
そう言う大人はエドワードの手を握り、無理やり探させようとする。
「いやだ!!!」
そう言ってエドワードはその手を振り払った。
そして、ぎゅっと目を瞑り、胸に手を当てて深呼吸をした。
深く、深く。
高まる胸の鼓動を落ち着かせながら、ゆっくりと、深く。
こう自分に言い聞かせながら。
「大丈夫、自分は自分。」
しばらくしてもう一度目を開けると、『大人』は消えていた。
その瞬間ある事に気が付いた。
胸に手を当ててみる。とても暖かい。確かに感じる。
「…見つけた。」
エドワードはくすりと笑った。
ないと思ったから、なかったんだ。探そうとしたから、大人が現れたんだ。
「もう大丈夫。もうなくならない。」
小さくうなずく。知らぬ間に手も足も動く。
「さ、何して遊ぼうかな。」
そう言って、エドワードはどこまでも広がる大草原へ颯爽と駆け出した。
『こころ』の赴くままに。
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