「アリババと40人のとうぞく」 〜モルジアナの聡明さ~
「アリババと40人のとうぞく」
〜モルジアナの聡明さ~
「ひらけ~ごま!」でおなじみのこの物語。息子が保育園児だった頃、お遊戯会で劇をしたことがきっかけで初めて内容を知った。
保育園の先生は素晴らしいプロデューサー。保育園児に「ひらけ~ごましお!」なんて言わせてみて、観に来たおじいちゃんおばあちゃん、おとうさんおかあさんたちを喜ばせていた。保育園児の劇なので、盗賊のお宝でいっぱいの洞穴で、呪文を忘れたアリババの兄カシムが盗賊たちに捕まえられたのをみんなで助けて、めでたしめでたし・・だった。
本当の物語ってどんな内容なのだろう?と息子と350円の本を買った。
物語の内容は・・
『お金持ちで欲張りの兄カシム、貧乏で働き者の弟アリババ。
ある日アリババがいつものように山で薪を集めていると40人の盗賊を発見!見つかったら大変だと隠れ息をころして見ていると盗賊のかしらが岩に向かって大声で叫ぶ、「ひらけ、ごま!」。岩がひらき、盗賊たちは中に入りしばらくするとでてきて「とじろ、ごま!」、岩扉は元通り。アリババは見た通りに試して中に入ると金貨や宝物が溢れていた。アリババは急いで金貨を袋に詰めて逃げ帰った。
金貨をもっていることを知った兄カシムに「どこからもってきたんだ?」と問い詰められたアリババは場所と呪文を教えた。翌朝カシムは洞穴に入ったが出るための呪文を忘れてしまった。そこへ盗賊たちが帰ってきてカシムはころされてしまう。
戻ってこないカシムを心配したアリババは山へ行き、洞穴でバラバラの死体になったカシムを連れて帰った。召使のモルジアナにくつやを呼ぶよういいつけ、くつやに頼んで死体を元通りに縫い合わせてもらった。
戻ってきた盗賊たちは死体がなくなっていることに「仲間がいるんだな!」と、家来の一人が旅人に変装して町にやってきた。家来はまずくつやを訪ね、くつやは死体を縫ったことを得意げに話した。家来はくつやに金貨をあげ、アリババの家を案内させドアにしるしをつけて帰った。
おつかいから帰ってきたモルジアナがドアに印がついているのに気づいた。利口なモルジアナは他の家にも印をつけて歩いた。夜、盗賊たちは町へきたが、印をつけたドアがいくつもあってアリババの家がわからない。盗賊たちは次の日もまた、モルジアナに見破られた。失敗した家来たちをころし、家来が失敗ばかりするためかしらは自分で町にきて、しるしをつけずに覚えて帰った。ろばを19頭、油壷を38個揃え、一つの油壷にだけ油を、空の油壷には家来が一人ずつ入り、かしらは油売りに変装して町に来た。アリババに泊めてほしいと頼み、アリババは盗賊とも知らず泊めてあげることにした。
夜、モルジアナがランプの油をもらおうと庭へ行くと油壷の中から声がした「かしら、もうでていいんですかい?」。モルジアナはすぐに盗賊だとわかった。「もう少し待て」と男の声で答え、鍋に油を煮立て、油壷に流し込み、盗賊たちはみな死んでしまった。
何も知らないかしらは、いい気持ちでお酒を飲んでいた。モルジアナは綺麗な服に着替え短剣をもって踊った。かしらは上機嫌。モルジアナがくるりくるりと回りながらかしらに近づき「この男は盗賊のかしらです!」と短剣をかしらの胸に突き刺した。驚いたアリババにモルジアナがこれまでのわけを話し、アリババは心からお礼を言った。盗賊の宝物は町中の貧しい人たちにわけてあげた。アリババと奥さんとモルジアナは3人で力を合わせて一生懸命働き、やがて大金もちになって幸せに暮らした』
と本には書いてあった。(モルジアナがアリババの妻になったなど、所説あり)
この物語の主人公は誰なんだろう・・圧倒的に、モルジアナの貢献度が高い。兄カシムが怠け者であることよりも、むしろ殺されてかわいそうと思うことよりも、盗賊は恐ろしいと感じるよりも、何より「モルジアナの聡明さ」が印象に残って仕方ない。
モルジアナはなぜこんなに機転が利くのだろうか、勘の鋭さとすぐに対応できる力と、盗賊相手でも肝が据わっている。
恐らく、自分は何をする人なのか、「召使」という「役割」「使命」においての意識が非常に高く、忠誠心をもって職務を全うする姿勢は、覚悟のある行動だと感じた。
もちろん、モルジアナの行動に心から感謝し、また、「幸せ」を自分だけのものにせず分け与える、分かち合うことのできるアリババの純粋な優しさを感じると、心が温かくなった。
モルジアナはどんな教育を受け、どんな環境に育ち、どんなことに影響を受け、何を感じ成長してきたのか、「モルジアナの物語」を想像したくなった。
「今いる」ところで、「今与えられている」ところで、「自分にできる」ことを、ひた向きに「する」ということ、
今ある「幸せ」は、誰かの行動により与えてもらっている、繋がっていることかもしれないという想像をもつことの大切さを、
モルジアナから学ばせてもらったように思う。
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