Novel Therapy『 見つけた! 』Lily作
『見つけた! 』
Lily 著
妖精の女の子のhanaは、ブルーシーというまちに住んでいます。
茶色で長いくるくるの髪の毛。
くりっとした青い目が、hanaの特徴。
それと、うたうことが大好きです。
お気に入りの黄色いワンピースを着て、今日もお気に入りの場所に向かいます。
ごつごつした岩と岩の間を登っていけるのは小さいhanaの特権。
岩を少し登った小高い場所が、hanaのお気に入りです。
ここに来れば、うみのむこうにあるものがみえる気がするから。
『うみのむこうになにがあるんだろう?』
ブルーシーは好きだけど、ブルーシーのひとたちと、hanaは心から仲良くできませんでした。
ブルーシーには、にぎやかな音楽も、かわいいお花屋さんも、おいしいパン屋さんもあるのに。
ブルーシーに住む人は、どこかhanaにうそをついているような気がして。
それがいつも、hanaはさみしかったのです。
『いつか、ブルシーのそとのせかいをみてみたいなあ』
ブルーシーにはないものを見てみたくて、hanaはお気に入りの場所でいつもそう考えていました。
Hanaには家族がいますが、お父さんもお母さんも、優しいけれど、あまり仲良くできませんでした。
お母さんのお花屋さんで、hanaはいつもいたずらばかり。
叱られるのはいやだけど、お母さんが叱ってくれるときだけは、さみしくない気がしていたからです。
『どこかにわたしのまだ知らない本当のかぞくがいるかも』
ある時から、hanaはそう思うようになりました。
『お気に入りの場所で歌ったら、本当のお父さんとお母さんに見つけてもらえるかも』
なんとなく思いついたアイデアを、hanaは試してみたくなりました。
その日、hanaはいつものくろいローファーを脱いで、はだしで岩を登りました。
『お父さんとお母さんに見つけてもらうために、いつもより高いところでうたわなくちゃ』
なんとかふだんより高いところにいい場所を見つけ、深呼吸をして、hanaは歌い始めました。
歌うのは、昔ゆめで聴いたうた。
ブルーシーの街ではきいたことがない言葉でしたが、hanaはなぜかよく覚えていました。
『ほんとうの家族に会えたら、いまのこのさみしさが消える気がする』
そんな気持ちを込めて一生懸命うたっていると・・・。
とつぜんどしゃぶりの雨が降ってきました。
晴れの日が多いブルーシーでは、経験したことのない雨です。
『しんじゃうかも、でも、かえりたくない!』
さくせんは失敗に思えました。
しぶしぶ高台をおりようにも降りれず、
どうしようかと考えていると、
手のこうにふわふわしたものを感じました。
それは大きな犬でした。
犬は、hanaをみちびくかのようにhanaの目を見た後すぐに歩き始めました。
hanaがそれにつづくと、いつのまにか岩陰にふたりはいました。
『ありがとう。』
小さな声でhanaがそう言ったとき、雨が小降りになってきました。
と、同時に足音がきこえます。
犬の飼い主のおじさんでした。
飼い主は、hanaをちらっとみましたが、すぐに犬を連れて帰ろうとしました。
が、犬がhanaのとなりをはなれなかったので、飼い主はしぶしぶhanaもつれていくことにしました。
少し歩いたら、おじさんの家につきました。
ここにくる道の間、おじさんはhanaと一言も話してくれませんでした。
どきどきしながらhanaがいると、
おじさんはhanaに温かいスープをおうちでごちそうしてくれました。
その時、hanaははじめて自分のこころが温かくなるのをかんじました。
『ありがとう。』
さっきより少しだけおおきな声でいえたとき、あめはすっかりやんでいました。
おじさんは、なにも言わずhanaを泊めてくれました。
hanaが気づいたとき、
おじさんと飼い犬との生活は、もうかなりの時間がたっていました。
あの雨の日の出来事から、hanaはおじさんと飼い犬に恩返しをするように、よく家のことを手伝いました。
まちのひとたちとも、自分から声をかけて仲良くしようとがんばりました。
hanaはもう、知っていました。
ほんとうにほしいものを手に入れる方法。
それは、
いたずらをして構ってもらうことでも、
高い場所で歌って見つけてもらうことでもなく。
まずは感謝すること。
そして、
自分からその感謝を伝えること。
だれかを待つのではなく、
自分で動くこと。
あれから、
hanaは自分のもつ力をおじさんや、
まちのひとたちのために使い始めました。
自分の力を誰かの笑顔のためにつかえることは、
hanaにとってすごくしあわせなことでした。
居場所は、
さがすのではなくつくればいい。
hanaはもう、見つけていました。
おしまい。
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