「一瞬」の、カンペキ。 『オレときいろ』
-「一瞬」の、カンペキ。-
『オレときいろ』
作:ミロコマチコ / WAVE出版)
表現が飛び散るほど溢れる、絵とものがたり。
限られた色、短いカンペキな言葉でつくる、
ダイナミックな、迫力ある響きによって、
「感じる」を届けてくれる、えほん。
青い猫と、
黒い木と、
「きいろ」。
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『オレときいろ』
きいろは とつぜん やってきた
つかまえようとしたら にげた
オレは すぐに おいかけた
ぜったいに つかまえてやる
なのに きいろが ふってきて
オレの じゃまをした
きいろは とつぜん さわぎだした
ぐわんぐわんに なって
オレは たって いられなかった
こんどは ぐんぐん はえて
あっというまに オレを おいぬかした
すごい はやさで
とおりすぎたりも した
オレは ぐるぐるになって
きいろを おいかけた
はへ はへ はへ はへ
やっと しずかに なった
オレは すっかり つかれてしまった
すう すう すう すや すや すう すう すう
オレは めっちゃくちゃに けっちらかした
きいろを ぜんぶ のこらず つかまえてやる
ぐわお わお わお わお―――
だっ だっ だっ ざっ ざっ ざっ
さっ さっ さっ さっ さっ さっ
さいた
それから オレは きいろと
なかよく やっている
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『徹底的に内なる声が伝わる言葉たち。』
つかまえてやる
オレの じゃまをした
『展開の勢いの程度が伝わる言葉たち。』
とつぜん やってきた
すぐに おいかけた
なのに きいろが ふってきて
とつぜん さわぎだした
たっていられなかった
あっというまに オレをおいぬかした
すっかり つかれてしまった
なかよく やっている
『一気に物語の世界に引き込まれ、
まるで主人公のネコの感覚を体感できる言葉たち。』
ぐわんぐわん
ぐんぐん
ぐるぐるになって
はへ はへ はへ はへ
すう すう すう すや すや すう すう すう
ぐわお わお わお わお―――
だっ だっ だっ ざっ ざっ ざっ
さっ さっ さっ さっ さっ さっ
完全にネコの「中心」の世界を、胸に届けられ、
爽快で、
引きこまれる。
「さいた」
散々にネコと共に追いかけ、追われの展開を続けたあとの、
この三文字は、強烈だ。
人が、「ひと」や「できごと」等の対象となる存在を、
「自分にとって」どうか、
一瞬にして「わける」心の行為を、思う。
自分にとって「邪魔」となる存在から、
知りたい、共にいたいという興味にかわる変化には、瞬間がある。
「きいろ」にはあらゆる種類の虫や動物たちが生まれ形どった。
このネコは、実は求めていたものかもしれない。
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