-あなたの「それ」はだれですか?- 『エイミーとルイス』
-あなたの「それ」はだれですか?-
『エイミーとルイス』
文:リビー・グリーソン
絵:フレヤ・ブラックウッド
訳:角田 光代
発行所:株式会社岩崎書店
あなたの「それ」はだれですか?
「それ」が思い当たらないなら、
あなたはまだ出会っていないか、
気づいていないだけかもしれない。
うん、きっとそうだ。
なぜか一緒にいて居心地がいいひと、
なぜか気をつかわないで共にあるがまま楽しめるひと、
どんなに離れていても不思議とタイミングよく伝わるひと、
いなくなると心にぽっかり穴が空いてしまったような淋しさを感じるひと、
一緒にいなくても、わかりあえ、信じあえるひと、
一緒にいなくても、存在を感じるだけで心が強くいられるひと、
そんなことが思い浮かぶひと。
この記事を読まれているあなたが、
自分自身が知っている世の中にひとりでもいることを、
出会っていなくても、
そんな存在が世の中にひとりはいることを信じられることを、
心から願う。
あなたにとっての「それ」を思い出すことを、
あなたにとっての「それ」に出会えることを、
そして、心を強く、安心と共にいられることを、
心から祈る。
この物語は、エイミーとルイスというこどものおはなし。
ふたりは、とても特別な存在。
ソウルメイトとも思える存在かもしれない。
あなたも、エイミーであり、ルイスである。
あなたにも、あなたを思うエイミー、ルイスがいる。
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エイミーとルイスは いつもいっしょ。
そらに とどくほど たかいとうを いっしょにたてたり
くまをうめられるほど ふかいあなをほったり
そらのくもを ふしぎなどうぶつに みたてたりして
あそんでいます。
エイミーとルイスは おおきなこえで よびあいます。
ママにおしえてもらった、とくべつなことばで。
「クーーーーーイ、ルーーーーーイ」
「クーーーーーイ、エーーーーーイ」
すなばにいるエイミーはブランコにのっているルイスを
クロゼットにいるルイスも こどもべやにいるエイミーを
それぞれのおうちにいるときは へいのむこうにむかって
おたがいのなまえをよびます。
そうするとかけつけてくれる、すがたをあらわすのです。
けれど、エイミーはとおくにひっこすことになりました。
ずっと、ずうっととおいところに。
ちきゅうのうらがわくらい、とおいところに。
ルイスは とうをたてることも あなをほることも くもをみあげることも つまらなくなってしまいました。
おおきなこえでだれかをよぶことも もうありません。
まいにち まいばん ルイスは エイミーのことをかんがえています。
エイミーも
ルイスのことばかりかんがえています。
「ものすごくおおきなこえでよんだら、エイミーにとどくかな」
ルイスはパパにもママにもそうだんしたけれど、
「あなたがおきているとき エイミーはぐっすりねむっているよ」といわれました。
ルイスはあきらめずにおばあちゃんにもききました。
おばあちゃんはいいました。
「やってみるしかないわね」
ルイスは うでをうーんとおおきくひろげて
あたまをうーんと うしろにさげて いきをすいこみ、
『クーーーーーイ、エーーーーーイ。』
まちじゅうのどんなちいさな ろじにもひびくような
おおきな、おおきなこえで エイミーをよびました。
そのままうしろにたおれこみ、
たおれこんだまま、
めのまえにひろがる そらを みつめました。
くもがゆっくりと たつのおとしごになり
それから、そらにときはなたれた、
おおきな つよい りゅうへと かわっていきます。
うみのずっとむこう、
エイミーはめざめ、
ねぼけまなこで あさごはんをたべにいきます。
「すてきな ゆめをみたわ。
ルイスが わたしをよんでいるゆめ。」
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「想い」や「祈り」ばかりにフューチャーせず、
はっきりと「声」で届けようとする、
全身全霊でエネルギーをつかう、をするルイス。
ここが、たまらなくいい。
おばあちゃんの「やってみないとわからないよ」は、
ルイスが待っていたこと
ルイスは、どうしたって、特別のことばをつかいたくて、
大きな声を出したくて、
届くかもしれない!いや届くんだ!できるんだ!
と、絶対に、信じている。
信じ切っている。
届けたいと、
自分が求めている明確なものの中心に、
自分がいる。
それは、
エイミーも同じだ。
ふたりが五感・六感をつかって遊んだ時間、
共にいた当たり前の時間、
共に呼び合い、それができる宝物の事実があるから、
ふたりはそれぞれに心を強く生きることができ、
離れていても繋がれる絆があること以上に、
離れていても注げる愛情が彼らの心にあるのだ。
このあと、
ふたりにはそれぞれに新しい時間と出会いが待っている。
信じあうことの事実という礎があることは、
それは、
この先、
二人が各々にこれから出会う、
別の「エイミーとルイス」の誕生の助けとなるだろう。
あなたの「それ」は、
だれですか?
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